藤井聡太棋士が受けていたことで話題となっているモンテッソーリ教育。
子どもの「生きる力」を最大限に引き出す教育法として、世界中で実践されています。
「聞いたことはあるけれど、どういう教育法なのか、よくわからない…」という方のために、モンテッソーリ教育の内容や特徴をくわしく解説します。
モンテッソーリ教育はどのようにして生まれたの?
モンテッソーリ教育は、20世紀初頭にイタリア初の女性医師、マリア・モンテッソーリが考案した教育法です。

出典:日本モンテッソーリ教育綜合研究所 HPより
ローマ大学で医学を学んだモンテッソーリは、大学卒業後、障害児の治療教育にかかわっていました。
そこで、日々、子どもを観察しているうちに、ある事に気づきます。
「歩くことを教えていないのに歩こうとしたり、言葉を教えていないのにしゃべろうとしたりする」
子どもは教えられたわけではないのに、自ら積極的に成長しようとしていたのです。
モンテッソーリは、「子どもには、自分を育てる力が備わっている。その力を自由に発揮できる環境さえ整っていれば、子どもは自発的に活動をくり返しながら成長できる」と考えます。
そして、その考え方を障害児の治療教育に取り入れると、子どもの知能が飛躍的に上がったのです。
その後、モンテッソーリは幼児教育施設の「子どもの家」を設立し、健常児にも同様の教育を行い、成果を上げていきます。
さらに、子どもを科学的に観察することで、独特な体系の教具を開発し、教育法を確立していきました。
「子どもの家」で生き生きと活動する子どもを目の当たりにした世間は衝撃を受け、やがてその教育法は世界に広がっていきました。
100年以上たった今でも世界中で支持を集め、140カ国以上にモンテッソーリ教育の実施園があるといわれています。
モンテッソーリ教育の考え方、目的とは?
モンテッソーリ教育の基本的な考え方は…
・子どもは生まれながらに自分自身を成長させる力を持っている。
・親や教師は子どもの要求を理解し、子どもが自由に活動できるように環境を整え、手助けする役割を担う。
子どもが自主的に活動を行い、周りの大人はそれを見守り、サポートします。普段からよく子どもを観察することが大切なんですね。
モンテッソーリ教育の目的とは…
・自立していて、有能で、責任感と他人への思いやりがあり、生涯学び続ける姿勢を持った人間を育てること
変化が激しく、これからますます多様化していく社会においては、このような人が求められています。
モンテッソーリ教育の特徴とは?
①自主性を重視した個別活動

子どもが活動する環境は、子どもの視点を取り入れ、道具のサイズや部屋のレイアウトが工夫されています。
そのような整えられた環境の中で、子どもは自分で選んだ活動に、個別に取り組みます
②縦割り異年齢クラス

異年齢を同じクラスにして、一緒に過ごします。年上の子と年下の子が互いに教えたり、教わったりすることで、他人との関わり合いを学ぶことができます
③独特な体系の教具を使う

モンテッソーリ教育では子どもが遊びに使うおもちゃを「教具」と呼びます。教具は色彩が美しく、遊ぶ目的が一つに絞られたものになっています
④自分を成長させるお仕事

普段の活動のことを「お仕事」といいます。
子どもが自主的に、いろいろな種類のお仕事をすることで、自分の能力を伸ばしていきます。
⑤子どもの敏感期

ある特定の事柄に対して強い感受性が表れる時期を「敏感期」といいます。
この時期の子どもは、その事柄に取り組むと、ものすごい集中力を見せ、いとも簡単に吸収してしまいます。
モンテッソーリ教育では、敏感期に合わせたお仕事を子どもに提供することで、子どもの能力を洗練させていきます。
特徴をまとめると…
子どもが整えられた環境の中で、敏感期に合わせた活動を行いながら、自分を成長させていく。
これが、モンテッソーリ教育の特徴です。
モンテッソーリ教育と聞くと、英才教育や早期教育を思い浮かべる場合がありますが、実際は子どもの能力や成長に合わせておこなう適時教育です。
モンテッソーリ教育を受けた有名人
100年以上前から行われているモンテッソーリ教育。教育を受けた方の中には、すでに世の中で活躍されている方も多くいます。モンテッソーリ教育を受けた有名人をご紹介します。
・google創業者
ラリー・ペイジ氏、セルゲイ・ブリン氏
・Amazon.com創業者
ジェフ・ベゾス氏
・ウィキペディア創始者
ジミー・ウェールズ氏
・Facebook創業者
マーク・ザッカーバーグ氏
・Microsoft創業者
ビル・ゲイツ氏
・俳優
ジョージ・クルーニー氏
・イギリス王室
ウィリアム王子、ヘンリー王子
・アメリカ元大統領
バラク・オバマ氏、ビル・クリントン氏
・棋士
藤井聡太氏
実業家や俳優、大統領などさまざまな分野で活躍している方が多くいますね。新たな価値を創造したり、リーダーシップを発揮できるのは、モンテッソーリ教育が土台となっているからでしょう。
モンテッソーリ教育の内容
日本では幼児向けの教育と思われがちなモンテッソーリ教育ですが、0歳から24歳までを対象としたものです。
アメリカやヨーロッパでは教育施設が、幼稚園から大学までそろっていますが、日本では教育の自由化がされていないため、小学校以降にモンテッソーリ教育を取り入れるのは難しく、幼児期のみ行う家庭がほとんどです。
そのため、ここでは、幼児期の教育内容について、ご紹介します。
幼児期の教育は、0歳から3歳までを「前期」、3歳から6歳までを「後期」に分けています。
0歳から3歳まで(前期)
前期の教育は7つの分野に分かれています。
①粗大運動の活動
歩いたり、階段を昇り降りするなどの全身を使った大きな運動をさします。ずり這いから歩行までの活動を行います。
②微細運動の活動
主に手や指を使った運動をさします。にぎる、落とす、たたくなどの活動を行います。
③日常生活の練習
粗大運動と微細運動が複合的に合わさった活動です。社会の一員として日常の活動に参加することで、環境への適応を促します。
自分で身じたくを整えたり、他人のお手伝いをするための練習をします。
④言語教育
子どもの言葉の発達段階に合わせてきめ細かなステップをふみながら、語彙を増やしていきます。
⑤感覚教育
発達段階や興味に応じた感覚教具にふれることにより、感覚の洗練し、知性を発達させていきます。
⑥音楽
音楽を聴くこと、楽器を鳴らすこと、歌うこと、踊ることなどに取り組み、表現することを楽しみます。
⑦美術
クレヨンや絵筆をにぎって絵を描いたり、粘土をこねたりします。目と手の協応動作を促し、思いのまま自由に表現することを楽しみます。
3歳から6歳まで(後期)
後期の教育は5つの分野に分かれています。
①日常生活の練習
大人がやっていることをマネしたい、体を動かしたいという気持ちをうまく利用して、自分の体を意思どおりにコントロールする能力を身につけます。
②感覚教育
感覚が敏感な時期に、意識して感覚器官を使うことで、五感が洗練されていきます。それにより、外からのさまざまな刺激や情報を収集できるようになり、知性や情緒が発達します。
③言語教育
子どもの言葉の発達段階に合わせて細かくステップが分けられており、最初は語彙を増やすことから始まり、最終的には文法まで習得します。
日常生活の練習で養った手や腕の力が、文字を書く力として役立ちます。
④算数教育
数などに興味を持ち始める時期に、数を具体的な物として認識することから始めます。そして、だんだんと抽象的な物へ移行します。数の概念を体で体感することで、より深い理解が得られます。
⑤文化教育
「ことば」と「かず」以外を対象とした幅広い分野になります。具体的には、社会や理科をイメージするとよいと思います。子どもたちの知りたいという気持ちを大切にし、なるべく多くの物事に興味を持つように工夫されています。
まとめ
モンテッソーリ教育について解説してきましたが、最後に簡単におさらいします。
・モンテッソーリ教育は、20世紀初頭にイタリアの女性医師、マリア・モンテッソーリが考案した教育で、100年以上も世界中で支持され実践されている。
・子どもがそれぞれの敏感期に合わせて、専用の教具を使いながら活動し、自分を成長させていくのが特徴。
・幼児期の教育は0歳から3歳の前期(7分野)と、3歳からの6才の後期(5分野)に分かれている。
前期から後期を通して行う「日常生活の練習」の分野は、教具を手作りすることができ、家庭でも取り入れやすい分野です。
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